
シニア世代にとって「資産」をどう管理し、次世代へどう引き継ぐかは大きなテーマです。しかし、物価高による生活防衛意識の高まりや、「まだ元気だから」という安心感から、具体的な行動に移せている人は多くありません。
今回、50代以上の5,393名を対象に実施した「贈与・資産承継に関する意識調査」からは、家族の円満を第一に願いながらも、実際には「お金の話」を避け、具体的な対策が先送りになっているシニアの現状が浮き彫りになりました。
■「贈与はしていない」が8割超。その数字の裏に潜む「思い込み」と「知識不足」
「今年(2025年)、家族へ贈与を行いましたか?」という問いに対し、「贈与はしていない」と回答した人が4,529人と、全体の約84%を占めました。 今回のアンケートでは、お小遣いやプレゼントなども「贈与」に含まれる旨を明記していましたが、それでもなお多くの方が「していない」と回答しています。そこには、「日常的な援助やお祝いは『贈与』ではない」という感覚や思い込みが、根強く影響している可能性があります。
また、贈与税の基礎控除(年間110万円)や教育資金の一括贈与などの制度について、「ほとんど知らない」「聞いたことがある程度」と回答した人は7割を超えました(合計3,786人)。この「無自覚」な状態こそが、将来的な課税リスクや、逆に使えるはずの非課税枠を逃す機会損失につながっている可能性があります。
Q. 「贈与税の基礎控除(年間110万円)」や「教育資金の一括贈与(非課税制度)」について、どの程度ご存じですか。
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■最も重視するのは「家族の円満」。しかし6割が「話し合いゼロ」という矛盾
今後の資産承継で重視したいことを聞くと、第1位は「家族との合意・円満な関係(1,660件)」でした。節税や公平性よりも、とにかく「家族が揉めないこと」をシニアは最優先に考えています。
しかし、そのための手段である「家族との話し合い」の実態を見ると、「まったく話し合っていない」が3,284人と、なんと6割を超えています。「話し合っていない」理由の多くは、「波風を立てたくない」「まだ早い」という心理によるものでしょう。
ですが、親の意向が不明確なまま相続が発生することこそが、皮肉にも「争族(トラブル)」の最大の原因となり得ます。円満を願うからこそ、口を閉ざしてしまう。そんなシニアのジレンマが見て取れます。
Q. あなたは、ご自身の資産の「生前贈与」や「相続」について、ご家族(子・孫世代など)と話し合うことはありますか。
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■「自分の老後」か「子・孫の支援」か。揺れる親心と優先順位
今後の資産承継で重視したいことの第2位には「ご自身の老後生活とのバランス(1,234件)」が入りました。
長寿化により、90代・100代まで生きる可能性を考えると、「子供や孫に資産を渡したいが、自分の生活費が尽きるのが怖い」という本音が透けて見えます。
また、贈与や相続に関して専門家への相談経験を聞くと、「相談したことはないが、関心はある」という層が1,735人(約3割)も存在しました。
自分だけで抱え込み、不安だからお金を使わず、話し合いもしない。これでは解決の糸口が見えません。「自分たちがいくらあれば安心か」を把握することが、結果として「いくらなら渡せるか」を明確にし、次世代へのスムーズな支援につながるはずです。
Q. 今後、ご自身の資産の活用や承継(贈与・相続)について、どのようなことを重視したいですか。
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「渡す」ことだけが愛情ではない。まずは「自分を守る」ことが家族の安心へ
今回の調査で浮き彫りになったのは、家族を想うがゆえに「資産をどうすべきか」と悩み、結果として動き出せずにいる姿でした。資産承継において、無理な贈与は禁物です。ご自身の老後資金が不足して子ども世代に負担をかけてしまっては、元も子もありません。
まずはご自身の資産状況を整理し、これからの生活にいくら必要なのかを把握する(=自分を守る)こと。その上で、余剰分があれば非課税枠などを活用して賢く渡す。この「順序」を守ることこそが、結果として「争族」を防ぎ、一番の願いである「家族円満」を叶える近道となるはずです。
- 調査テーマ:
- シニアの「贈与・資産承継」に関する意識調査
- 調査方法:
- インターネット調査
- 調査期間:
- 2025年11月15日~17日
- 調査対象:
- 全国の50代以上
- 有効回答者数:
- 5,393人
※本調査は、当社が運営するポイントサイト「Gポイント」の会員を対象に、インターネット調査を実施しました。