
65歳を迎える頃から、食卓を取り巻く景色は少しずつ、しかし確実に変化し始めます。それは単なる「衰え」ではなく、体が求めている栄養や、生活スタイルそのものが変わろうとしているサインなのかもしれません。
今回、50代以上の方を対象に実施した「日々の食事と健康に関するアンケート」の結果から、65歳を境に大きく変化する食生活の実態と、シニア世代が直面している「食の課題」が見えてきました。 特に65歳以上の方にとっては、共感できる悩みとともに、明日からの食生活で見直すべきポイントが見つかるかもしれません。
■「1日3食」へ回帰する65歳以上。現役世代との生活リズムの差が鮮明に
まず、日々の食事の回数について聞いたところ、65歳以上の方の約8割(79.6%)が「1日3食、ほぼ規則正しく食べている」と回答しました。
一方、これを65歳未満(50~64歳)の回答と比較すると、興味深い差が出ています。現役で働いている方も多い65歳未満では「1日3食」の割合は約65%にとどまり、不規則になりがちな傾向が見られました。
65歳を過ぎ、定年退職などで自由な時間が増えることで、規則正しい食生活に戻る方が多いようです。規則正しさは健康の基本ですが、一方で「3食しっかり食べる」ことは、それだけ「何を食べるか(栄養バランス)」の管理が重要になることも意味しています。
Q. あなたの食生活で、最も当てはまるものはどれですか?(65歳以上と65歳未満の比較)
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■4人に1人が医師から「指導・注意」を受けている事実
健康意識が高まる世代とはいえ、現実はシビアです。
この1年間に医師や健康診断で「食事の内容や量について改善をすすめられた」経験があるかを聞いたところ、65歳以上の約26%、つまり4人に1人が「指導された」または「注意された」と回答しています。
「特に何も言われていない」という方が多数派ではあるものの、加齢とともに代謝が落ちたり、持病のリスクが高まったりする中で、自己流の食事管理だけではカバーしきれないケースが出てきていることがうかがえます。
Q. この1年間に、健康診断や医師から「食事の内容や量について改善をすすめられた」ことはありますか。(65歳以上)
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■意識の変化:栄養バランスの意識が高いシニア、足りない栄養をサプリで補間するプレシニア
では、具体的に食事で何を気にしているのでしょうか。
ここに年齢による「スタイルの違い」がはっきりと現れました。65歳以上の回答を見ると、「塩分を控える(55.7%)」、「野菜を多く摂る(62.6%)」、「タンパク質を摂る(37.2%)」など、多くの項目で65歳未満(50~64歳)の数値を上回っています。年齢とともに、あらゆる栄養素に気を配り、食事全体で健康を管理しようとする真面目な姿勢がうかがえます。
しかし、唯一65歳未満の方が高かった項目があります。それが「健康食品やサプリメントで補う」です。65歳以上(10.1%)と比較し、65歳未満(11.4%)の方が利用率が高くなっています。
現役世代で忙しい65歳未満は、サプリメント等の「効率」に頼りがちですが、定年後の65歳以上はサプリのみに頼らず、「日々の食事そのもの(素材)」を見直すことで健康を維持しようとする。そんな「食への原点回帰」とも言える意識の変化が見て取れます。
Q. 食事の「栄養バランス」について、意識していることは何ですか?(65歳以上と65歳未満の比較)※複数回答
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■シニアの隠れた悩み。一番の負担は「重い荷物」
食事そのものへの意識は高い一方で、「食材の調達」にはシニアならではの物理的な課題があります。
日々の買い物で感じる不便を聞いたところ、65歳以上で最も多かった悩みは「重いもの(米、飲み物など)を運ぶのが大変(21.4%)」でした。次いで「頻繁に買い物に行くのが面倒(19.0%)」が続きます。免許返納や足腰の筋力低下などにより、お米や調味料、飲料といった「重くてかさばる物」の買い出しは、想像以上の重労働となります。
しかし、食材宅配やミールキットを「現在、定期利用している」人は65歳以上で約1割(10.0%)にとどまっているという結果も出ています。「重いものを運ぶのは大変」と感じつつも、まだ多くの人が頑張って自分で買い物をしている、あるいは家族に頼っているという現状が見えてきました。
Q. 日々の食品の買い物で、具体的に不便や負担を感じることがありますか?(65歳以上)
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「減塩・タンパク質」と「買い物の工夫」で持続可能な食卓を
今回の調査からは、65歳以上のシニア世代は、日々の食事の中で高血圧予防(減塩)や体力維持(タンパク質)といった課題に真摯に向き合っている姿が浮き彫りになりました。一方で、買い物の「重さ」という物理的な負担はじわじわと増してきています。
無理をして重い荷物を運び、体を痛めてしまっては元も子もありません。最近では、スーパーの配送サービスや、重いものだけネットスーパーを活用するなど、便利な選択肢も増えています。
「食べるもの(栄養)」への配慮だけでなく、「どう手に入れるか(買い物)」の負担を減らすことも、これからのシニアライフの食卓を守る重要なポイントになりそうです。
- 調査テーマ:
- 日々の食事と健康に関するアンケート
- 調査方法:
- インターネット調査
- 調査期間:
- 2025年11月23日~25日
- 調査対象:
- 全国の50代以上
- 有効回答者数:
- 7,024人
※本調査は、当社が運営するポイントサイト「Gポイント」の会員を対象に実施しました。